微細藻類の可能性

 微細藻類は、「オイルシェル(石油頁岩)」を作った生物として知られています。藻類には、脂肪や炭化水素を大量に生産する種が多く、これらの藻類をバイオマスエネルギーの原料として利用することは、1970年の石油危機後から主に米国で研究されてきました。藻類のオイル生産能力は年間約 47トン〜140トン/ha と算定され、トウモロコシ、大豆、ベニバナ、ヒマワリ、アブラナ、オイルパームなど産油植物と比較すると、25〜120 倍もあります。
 例えば、米国の輸送で費やされるオイル量の半分を藻類オイルで賄うとすれば、藻類の培養に必要なプールの面積はコロラド州の 1/7 〜 1/20 程度にすぎない 190 〜 560万haでこと足ります。米国では輸送部門のエネルギー消費量が全消費量の約7割を占めていることから、広大な砂漠を利用した藻類ディーゼル生産技術開発が注目されています。

 緑藻類 Botryococcus braunii(以降「ボトリオコッカス」という。)は、藻体乾燥重量当たり 20〜70 %の重油相当の炭化水素を算出することで知られている藻類です。ボトリオコッカスは、「細胞内、及びコロニー内部にオイル成分を算出する」ことが可能です。また一般的な植物性オイルは、金属を酸化させたり、残余オイルが固形化したりするのに対し、この微細藻類が算出する炭化水素は、化石燃料のように既存システムを用いて精製利用することができます。筑波大学では、この有望なボトリオコッカス株を取得しており、コスト面で有利な大規模開放系利用の研究開発を進めています。
筑波大学のおける当面の研究開発目標は、「オイル生産効率を1桁向上させる(収量で1,000t/ha/年)」ことです。2020年までに実規模生産プラントで実証し。2025年までにそれぞれ社会へ適用していく計画を描いています。

 近年、わが国では、耕作放棄地の荒廃が問題になっています。22万haある「耕作放棄地」のすべてに微細藻類培養槽を設けることで、年間 6.57億t-CO2/年の二酸化炭素排出削減に寄与できる可能性があります。太陽光発電と用地競合も考えられますが、将来の低炭素社会においても素材製造、飛行機燃料など、「油の火力ニーズ」は存在すると考えられます。

 ボトリオコッカスは、国産の新しいエネルギーとして期待されています。
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