難しすぎてブログネタにはちょっと…wパート2

生物多様性とは】

 「生物多様性」とは、一言でいうと「深海から高地まで、地球上のさまざまな環境に適応したたくさんの生きものが暮らしていること」です。この言葉の中には次の3つの側面が含まれています。
森林、河川、湿原、干潟サンゴ礁、海岸といった多様なタイプの生態系があることを「生態系の多様性」、このような生態系の中にいろいろな種類の生きものがいることを「種の多様性」、同じ種の中でも体の大きさや模様が異なったり、疾病への抵抗力に違いがあったりするなど、さまざまな遺伝的な差異があることを「遺伝子の多様性」といいます。

 この3つの側面についてもう少し掘り下げてみましょう。

 その①生態系の多様性とは、地球上のさまざまな環境によって、多様な環境がつくられていることを指します。例えば、降雨が地面にしみ込み草木から蒸発して雲となり雨を降らせるという水の循環。
食物連鎖によって消費者を巡った有機物が、最後は分解者によって無機物に戻り、再び生産者が有機物をつくり出すという物質の循環。
私たちの経済活動も含め、地球上の生きものの活動に伴って排出される二酸化炭素を森林が吸収し、酸素を生み出すという大気の循環。
これらのさまざまな循環が、例えば、特定の池や林という小さい単位から、それらが集まった流域という単位、いくつもの流域からなる列島や大陸という単位、さらに地球全体というように切れ目なくつながって地球の生態系が成り立っていて、全く同じ生態系は存在しません。それが、生態系の多様性ということです。

 その②種の多様性とは、地球上のさまざまな環境にあわせて生きものが進化した結果、未知の生物も含め、現在 3,000万種ともいわれる多様な生物が暮らしていることを指します。また、生きものの種類が多様だと、生きもの相互の作用も多様になります。食べる・食べられる、寄生する・住み場所を提供する、資源をめぐって競争する、死んだ生きものを分解するなど、直接・間接のさまざまな相互の作用が生じます。例えば、食べる・食べられるという関係において、食べられるものは何でも餌にするという利用のしかたもあれば、この昆虫はこの種類の葉っぱだけを食べるといったように特定の種同士が強く結びついている関係もあります。
生態系がつくり出すさまざまな物理環境が存在すること、生きものと物理環境との関係や生きもの同士の関係といったさまざまな相互作用によって種の自然な淘汰が起きること、進化を引き起こすような遺伝的な差異があること、これらによって種の多様性が生まれているといえます。

 その③遺伝子の多様性とは、生物が個体として生命を維持したり、繁殖により次の世代を残したりするなど、存続しようとする存在であることを念頭にその意味を考える必要があります。現在、私たちが見ている多様な生きものは、長い進化の過程を経て生み出されてきたものです。生物の個体の間に遺伝的な差異があり、その差が存在や繁殖に影響するとき、まさにそこで進化が起きます。少しでも生き残りやすい性質が次の世代として広がっていきます。どのような性質が生き残りやすいかは、生きものの周辺の環境に左右されます。違う環境の下では、違った性質が進化します。すなわち生物(個体)の間に存在する遺伝的な多様性(差異)は、生物の進化の源であり、私たちが目にしている生物多様性は、遺伝的な多様性があってこそ生まれたものといえます。

 では、生物多様性によって、私たち人間はどのような恩恵を受けているのでしょうか。生態系の多様性があることで、森林が光合成によって酸素を生み出したり、水源をかん養したりすること、河川が肥沃な土壌をもたらしてくれること、干潟が汚れた水を浄化してくれること、サンゴ礁が多くの種の産卵、成育、採餌の場であって豊富な魚介類をもたらしてくれることなど、さなざまな恩恵があります。人間はこのような環境のなかで進化し、文明を築いてきました。種の多様性があることで、人間は、これらの多様な生きものの中から利用できるものを探し、穀物や野菜、家畜など食料を大量に生産できる方法を生み出し、食料の確保を容易にするといった恩恵を受けました。さらに、遺伝子の多様性は、「生物多様性があること」の全体を支えており、人間も含めた地球の生物にとって欠くことのできないものであると認識しなくてはなりません。
 私たち人間が生態系から得ている恩恵をより具体的に見てみると、生態系は、動物や植物が再生産される仕組みを内在しており、この仕組みのおかげで、人間は食料や水、木材や燃料といった生存に必要なものを得ることができています。また、生態系は、気候変動や洪水の緩和、水の浄化、病気や害虫の抑制など生物の生息環境を安定させる調整機能もあります。さらに、私たちの精神や文化にも生態系の要素が深くかかわっています。例えば、自然に対して畏敬の念を抱くことや、レジャーとして風景を鑑賞したり、動植物を観察したりすること、絵画や俳句の対象として自然物が使われることが挙げられます。こうしたさまざまな生態系の恩恵を人間が享受するときに、その総体を「生態系サービス」といいます。

 では、生物多様性とそれを基盤とする生態系サービスの劣化はどのような形で現われているのでしょうか。まず、私たちが日常的に口にするもののほとんどは、植物や動物といった生きものに由来するものです。そうでないものは、水と塩ぐらいです。自然の中の生きものを直接利用することもあれば、自然に暮らしている生きものを排除して人間にとって有用な穀物や家畜をそでてることもあります。人間による環境の汚染によって生活の場所を失ってしまった生きものも少なくありません。さらに、人口の増加やライフスタイルの変化に伴って、その負荷は増加し続け、あまりにも大きくなりました。例えば、地球上の森林は人間の活動によって、その影響が広がる以前に存在していた面積の半分が消失し、漁業資源は過剰利用している割合が増え続けています。このように、自然に負荷をかけていることは明らかです。生物多様性条約事務局が公表した地球規模生物多様性概況第3版では、生態系サービスの変化について分析しており、その結果からも分かります。食料に関する世界的な動向は、穀物や家畜、水産養殖のサービスは増加しているものの、漁獲、野生下の食物のサービスは低下しています。忘れてはならないことは、生物多様性とそれを基盤とする生態系サービスは、およそ40億年という長い進化の歴史を経て形成されてきたものであり、工場で作られる製品のように人間の手で作り出せるものではなく、一度失ってしまえば容易には元に戻らないということです。

 生物多様性や生態系サービスを良好な状態に保ち、将来の世代にも引き継いでいくために私たちは何ができるのでしょうか。環境に対して影響を及ぼしているという観点から人間の活動は非常に大きいものであり、生態系サービスに依存する社会全体としての取り組みが必要です。例えば、生物資源に依存する製造業や建設業において、原材料の選択や加工、廃棄などの各工程を生物多様性に配慮した持続可能なものに転換することや、市民を含めたさまざまな主体による生態系サービスへの適切な支払いによって、人類共通の財産として管理していくことなどが挙げられます。また、私たち個人ができることも積極的に取り組むべきでしょう。昔のひとたちは、来年も収穫や漁獲が得られるかに気を配って生活していました。大半の人が自ら生産活動を行わなくなった現代では、直接こうじたことに配慮する場面は少なくなりました。しかし、日々いのちをいただいて生きていることを感じ、食べ物を大切にして無駄にしないこと、都会であっても街路樹の新緑や紅葉、タンポポや桜の開花、季節ごとに移り変わる鳥のさえずりや虫の鳴き声に気付くことはできるはずです。こうした日常の感覚をもち、もったいないという気持ちを基本に行動することが大切です。社会全体から個人まで、生物多様性に配慮し、生態系サービスを維持する取り組みを進めれば、この地球で上手に生きていくことができるでしょう。

灰鰤で投稿HatenaSync