「世界を知る」

 良い記事なので、忘備録として書いておきます。
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 母は送迎バスを断った。幼稚園までの道のりを子どもと一緒にゆっくり歩く。片道約30分。それは〝宝石のような時間〟となった。
ススキの穂が朝日に輝く。雪道は遊びの舞台だ。桜吹雪を身に浴びた。あじさいの花のカタツムリにエールを送る。四季の移り変わりを心豊かに味わいながら、母子は通った。

 子どもは風邪もひかず、元気に育つ。小学生のとき、市のサッカーチームに選ばれた。中学校では、いつもトップクラスの成績。学級委員もしっかり務めた。「いっぱい歩いて育てたおかげで体も丈夫、心も丈夫」と、母は明るくほほ笑んだ。

 一方で、驚くような話も知った。有名大学の学生に、推定可能な数値を問うたというのである。東京―札幌間の直線距離は? 「30㌔!」。一円硬貨の直径は? 「5㌢!」。正解は約800㌔、そして2㌢。1㌔の距離も歩いたことがないのだろうか。物差しを使ったことがないのだろうか。

 リアル・ワールド(現実世界)を体感すること――それが学ぶということだろう。バーチャル(仮想)な感覚をいくら肥大化させても、人生の真の豊かさは得られまい。「世界を知る」とは教科書の知識を暗記することではない。季節の風と光を、わが身に浴びることから始まる。

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実際に手に触れ、目で見、実感することが学ぶこと・世界を知ることに繋がります。
教育には、手間や時間を惜しんではいけないということですね。
灰鰤で投稿
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